~風ブログ~

3.忘れてはいけない関東大震災の延焼火災!  【Homeに戻る】


■基本情報
■関東大震災は我が国で発生した過去最大の被害を出した地震で東京や横浜を中心に家屋の倒壊や延焼火災の他津波や土砂災害など甚大な被害がでた。 本ホームページ(防災の広場)では関東大震災の記録をコンパクトに集約したもので自助や共助の活動に利用されることを期待する。
■地震当日は台風くずれの低気圧が通過中で強風が吹いていたため延焼火災が大規模に拡大し21万2千棟あまりが焼失し 延焼火災による死者は9万2千人で、この地震全体の死者10万5千人の約88%にもおよんだ。
■この地震の教訓である大都市における住宅密集地の延焼火災の恐ろしさをけして忘れてはいけない。
【表11-1】関東大震災基本情報
項 目 内  容 項 目 内  容
①発生日
1923年9月1日
(大正12年)
②発生時間
午前 11:58
③地震の
 規模

M7.9
④最大震度
   7 
⑤震源域
小田原市の北10km~鎌倉~三浦半島先端~館山に至る線上/深さ25km
⑥全壊家屋
109,713棟
⑦死者(合計)
105,385名
⑧焼失家屋
212,353棟 ⑨死者(火災)
91,781名
  (内数)
⑩半壊家屋
102,773棟
⑪死者(住宅倒壊)
11,086名
  (内数)
⑫流出・
 埋没他

  1,301棟
⑬死者(流出・埋没他)
 2,518名
  (内数)
⑭気象条件
勢力を落とした台風が能登半島付近にあり関東地方は地震発生の12時頃は台風に吹き込む南南西の風12.3m、その後台風が東に進むと 風向きは西風、北風と変わって夜には最大風速22mまで強まった。


■地震発生当日の気象状況 
●基本情報の気象条件にも記載したが関東大震災地震当日の前日に台風が九州地方に上陸し、台風はその後瀬戸内海を通過して日本海沿岸を北上していたため 地震当日には勢力は落ちたものの能登半島付近にあり、関東地方では早朝よりこの台風に吹き込む南西の風が吹き、地震発生時刻の12:00頃は南南西12m/sの風が吹いていた。
●地震後も台風が北上するにつれて風は南南西から西風そして北風と風向きが変化し夜間には台風の吹き返しの風で最大風速22m/sまでの強風になった。
●この刻々と風向きが変わる強風と燃えやすい構造の家屋が密集していたことが広域の延焼火災に繋がりまた避難をより難しくした要因でもあった。


■広域延焼火災の状況と被害 
●火災は内閣府発行の「広報ぼうさい(NO.40)」によると当時の東京市だけでも地震後134ヵ所から出火して、初期消火で鎮火したのが57ヶ所で残した 77ヶ所が延焼火災となり、延焼は市域面積79.4km2の43.6%の34.7km2に及び21万余棟が焼失し、火災による死者は91,781名と言う甚大な被害を出した。
●当時の警視庁消防部は6消防署に824名の常備消防員を置きポンプ自動車38台を有し、ポンプ自動車は各消防署や出張所に概ね1台を配置し 当時の東京市の消防体制は国内有数の消防組織を持っていたが想定をはるかに超えた同時多発の火災と、その後の延焼火災は当時の消防能力で対抗できる レベルではなかった。
●このように同時多発の火災が強風に煽られればたちまち延焼が広範囲に伸展するが地震発生時刻の12:00頃は南南西12m/sの風が吹いており更に 夕方には北風に変わり最大風速22m/sまでの強風になっていたことと、現在のように建築基準法や消防法などで厳しく建物の耐火性を定めていた訳でも ないため燃えやすい木造家屋等に次々延焼していったと思われる。

【写真11-5】上野山上ヨリ見タル猛火(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●【写真11-5】は上野山(現在の上野公園)から見た火災の煙で巨大な雲のようになっておりすでに「点」の火災では無く「面」として延焼が拡大
していることが分かる。
延焼速度は関東大震災時の風速15m/sレベルで200~300m/H、阪神・淡路大震災時の風速3m/Hで20~40m/H と言われており更に火災は出火点から風下方向に扇形に加速度的に広がるため地震直後の同時多発の火災が多数点在していれば短時間で延焼火災に取り囲まれ気が付いたときは 逃げ場を失ってしまうことになる。

【写真11-6】船にて避難する人々(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●特に関東大震災のように台風に吹き込む風の影響で風向きが変化すると延焼方向が刻々と変わるため延焼火災をかわしながら避難するのはますます難しい状況になる。
●【写真11-6】は場所等不明であるが川か運河に沿って延焼火災が起きており、そこからの熱風、火の粉、輻射熱を避けるため 船で避難する人々の様子が分かる。当時延焼火災の中を避難した人の証言に「火の壁が迫ってくる」と言う表現があるがこの写真を見れば 延焼火災の恐ろしさを再認識することができる。

【写真11-7】火に追われ上野駅前に押寄せる避難民(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●特に火に追われて橋のたもとや学校の校庭、寺院の敷地など比較的狭い所に避難した人たちが身動きできず結局焼死したケースや東京の陸軍被服廠(ひふくしょう)の 跡地(1辺が200~300m)の比較的広い場所には周りが延焼してきたのを知り大八車等に家財道具積んで数万人が殺到したが周りを火災で囲まれ火災旋風も 発生したことから大量の火の粉が家財道具等の可燃物に燃え移り、ごく短時間に40,000人近くの方が焼死した。

【写真11-8】神田小川町通の惨状(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●当時横浜市の関内にあった横浜公園も1辺が200~300mで陸軍被服廠の跡地とほぼ同じ面積の避難場所になりやはり数万が殺到しこちらでも火災旋風が 発生し焼屑が雨のように降ってきて園内の建物が焼け落ちたが、陸軍被服廠の跡地とは対照的にほとんどの死者が出なかった。
この差は横浜公園には樹木が多く火の粉をさえぎったことや、避難した人は地震後すぐに火災に見舞われ家財を出す暇なく着の身着のままで この公園に避難してきたこと、園内の水道管がたまたまは破損して水溜りがあったことが幸いしたと言われている。
横浜公園の幸運な教訓は延焼火災からの避難場所に反映すべきで事項でもある。

■関東大震災の広域延焼火災からの教訓 
【写真11-9】焦土と化した銀座通(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●現代の東京で同様な地震が起きた際に車で避難しようと公道に乗り出すと一斉に大渋滞が起きてしまうことは東関東大震災の際、帰宅者等で都内の道路が 大渋滞を起こしたことで証明されている。このような状態下で道路に面した建物等の火災が道路の車に延焼することが考えられるが、車が延焼すれば燃料に引火して 爆発を起こし猛烈な炎は近隣の車に更に延焼・爆発の繰返しが起き避難道路はたちまち火の海になる可能性がある。
●こうなれば延焼防止線や緊急車両用に利用できる幹線道路が逆に延焼ルートになり延焼速度を上げて避難をより困難なものにしてしまう最悪 な状況になることも予想される。

【写真11-10】上野山上から見た下谷浅草方面(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural ●このようなことから「旧陸軍被服廠の跡地地悲劇」の教訓を忘れ無いためにも避難の際は車は使用せず、徒歩で避難場所まで素早く逃げることが重要で、 いざと言う時のために普段「自助」・「共助」の活動を通じて延焼火災からの避難方法を家族や近隣と話し合い避難行動の考え方を共有化しておく必要がある。
●また当時の東京市では江戸時代からの街並みが至る所に残ったままで人口集中がおこり、超過密状態の燃えやすい木造家屋が密集していたことが延焼火災を 更に拡大した原因でもある。

【写真11-11】東京大震大火災明細地図(所蔵・提供:東京都立中央図書館)
Natural現在の東京や大阪他大都市では場所にもよるが極端に過密状態の場所や耐震性の無い家屋が多数存在することも事実である。
●このようなことから現代の大都市でも関東大震災並みの地震が発生し強風の気象条件下であれば広域の延焼火災が発生する可能性があることを忘れてはいけない。
この地震は近代化した都市を初めて襲った唯一の巨大地震で、この事実は今後の防災上で建物の耐震化・耐火性能向上、延焼防止を考慮した都市計画、 避難場所の選定、住民の避難方法などに防災上学ぶべき点が極めて多いといえる。

【図11-12】関東大震災の死亡原因
Natural ●【図11-12】は関東大震災での死亡原因を示したものであるが火災による死亡者が全体の87%を占めており地震後の延焼火災がいかに危険なのかを示している。
●東京都では地域での危険度を5段階評価してどの地域が危険なのかを 「地域危険度評価」 を提供している。リンク先の「地域危険度マップ」で都内23区をクリックすると詳細な指定された区の危険度マップが表示されるので まずは自分が住んでいる場所や通勤・通学している所の危険度を確認されると良い。

■南海トラフ・首都直下地震への備えはできているか!
●国の中央防災会議の「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」によれば今後発生が予想される首都直下地震での想定出火件数は最大2,000件 (内東京都内では1,200件)としており消火用水の断水や道路の損壊、広域停電等の障害も考えれば現状の消防能力をはるかに超える事態となり幹線道路等の 焼け止まり線でどの程度延焼を食い止めることができるかがポイントとはなるが延焼棟数は38,000棟~412,000棟と予想している。
●冬の乾燥した夕食時間帯で10m/s程度の強風が吹いている日に関東大震災並みの地震が来て消火用水の断水、広域停電、道路の損壊による交通の 麻痺などの最悪シナリオとなれば、関東大震災を超える巨大な延焼火災が起きることも覚悟しておかなければならない。
●東京、大阪、名古屋などの大都市では巨大地震後の延焼火災に備えて普段から避難場所を確認しておき実際に徒歩で避難してみる自主避難訓練の実施が 自分や家族を守るために必須なことであることを知るべきである。



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