地震の仕組み
■日本は世界でも有数の地震国で世界で起きる地震の約20%は日本で起きていると言われている。気象庁のデータによると2015年の震度1以上の
地震は何と年間で1,841回発生しており、月当たりの平均は153回にもなる。なぜこんなに地震が多いのでしょうか。
■それは日本列島や付近の地殻構造に由来するものだ。日本列島は世界的に見ても有数なプレートが
ひしめき合っている場所で、日本列島の下ではプレートが活発に活動しており、この結果あちこちに「地震の巣」
ができ、この「地震の巣」(アスペリティ)が繰返し地震を発生させている。このため日本は世界有数の地震の多発国となっている。
【図21-1】日本近辺のプレート境界図(出典:地震調査研究推進本部)
■地球の表面は数十枚のプレート(岩盤)に覆われているが、日本近辺はそのうち4枚のプレート(太平洋プレート、北米プレート、
フィリピン海プレート、ユーラシアプレート)がひしめき合っていて、それぞれは次のような複雑な動きをしている。
●太平洋プレートは日本海溝,千島海溝で北米プレートに、伊豆・小笠原海溝でフィリピン海プレートの下にもぐり込んでいる。
●フィリピン海プレートは南海トラフでユーラシアプレートの下にもぐり込み、相模トラフで北米プレートと衝突している。
●北米プレートは糸魚川-静岡構造線と北海道西部沖を結ぶライン(日本海東縁)でユーラシアプレートと衝突している。
■このように日本付近のプレートはお互いに押し合いへし合いしており、この結果特にプレート境界面で地震が多く発生している。特に大きな
地震が発生しているのは太平洋プレート、フィリピン海プレートが陸側のプレートにもぐり込みを起こしている日本海溝、南海トラフ、相模トラフと呼ばれる場所で、
ここでは過去にM8~9クラスの巨大地震が度々発生している。
■つまり日本列島で生活している我々は巨大地震がいつ襲ってくるか分からない「恐怖の地震列島」の上で毎日生活していることを再認識しなければいけない。
<地震はどうして起きるの!> トップに戻る
■地震とは地下で岩石が破壊される現象で破壊の衝撃が地中を波となって伝わり地表に達したとき、地上のものを揺らす現象でこのとき
地上では地震が来たと感じる。ある面を境に両側の岩盤がずれ合う場所を「断層」と言うが、この断層面で岩石が破壊されることで地震が
おきる。つまり地震は「断層の活動」で発生する。
【図21-2】地震発生の仕組み(出典:地震調査研究推進本部)
■このとき最初の破壊の開始点を「震源」と言い、震源の位置は各地の観測点に伝わる地震波(P波、S波)により求めることができる。
地震波にはP波とS波がありP波が先にS波が遅れてやってきます。
■地震波の速度は地質にもよるがP波が秒速7km、S波が秒速4kmで、この速度差を利用して一定規模以上の地震がくると気象庁が緊急地震速報を発信し、
更にこの情報を基に電話会社が対象地域の携帯電話に一斉配信する仕組みがすでに稼動している。
緊急地震速報サンプル音(心臓に良くない音です!視聴注意)
<海溝型地震とは!> トップに戻る
【図21-3】海溝型地震の仕組み(出典:内閣府発行「ぼうさい」第63号)
■地震には断層の動き方によりいくつか種類があるが、2011年に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は日本海溝で海側の
太平洋プレートが陸側の北米プレートにもぐり込む断層面で発生した巨大地震で、この際に巨大津波を起こし特に東北地方に大被害をもたらした。
このように海側のプレートが海溝やトラフにもぐり込む断層面で起こす地震を「海溝型地震」と言う。
■【図21-3】は「海溝型地震」の具体的仕組みを模したもので、陸側のプレートが蓄積した歪の限界に達すると両プレート面(断層面)で滑り
が起り陸側プレートが跳ね上がる。この結果地震が発生し更にプレートの跳ね上がりにより海水が押し上げられ津波も発生する。
■一方海側プレートは沈み込み際に大きく湾曲するためプレート内の岩盤が割れることがあり、この場合でも地震が発生する。この様な
地震を「プレート内地震」と言う。この地震は「すでに沈み込んだ海洋プレート内」や「これから沈み込む海洋プレート内」で起きるが
前者は震源が深くなり、後者は震源が浅くなる傾向にある。
<内陸型地震とは!> トップに戻る
■陸地の断層が動いて起きる地震を「内陸型地震」と言うが1995年に起きた阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)、2004年に起きた新潟中越地震、
2016年に起きた熊本地震などは典型的な活断層による内陸直下の地震である。(新潟中越地震は既存の活断層が動いたのではなく、新たに起きた
断層であるとの見解が出ている)
■【図21-2】は断層がずれて方を模したものであるが、断層のずれ方は断層面に加わる力の方向の違いにより正断層、逆断層、横ずれ断層に
分類される。「内陸型地震」の場合はいづれにしても地表から浅い所で発生することが多く、このため地表の揺れは大きくなり建物が激しく破壊
されたり大規模な土砂災害が発生する傾向にある。
【写真21-4】地上に現れた野島断層(提供:神戸市)
■活断層とは最近数十万年の間に活動した形跡が地形に残っていて将来も活動して地震を発生させると考えられる断層のことで、不自然に一直線に伸びた谷や崖が
活断層の存在を示していることが多い。また両側の地形が上下・水平にずれていたりするのも活断層の跡である。
■【写真21-4】は1995年に起きた阪神・淡路大震災の際、動いた活断層の野島断層が地表に現れた写真であるが、このように全ての活断層が地表に現れる
訳ではなく、地中奥深い所で活動するものも多数ある。また前述の2004年に起きた新潟中越地震の断層は既存の活断層が動いたのではなく新たにできた断層で
あることが地震後の調査で判明しており、確認されている活断層は全国で2千以上あるが「地中に隠れているもの」や「新たにできるもの」などがあり
日本列島の活断層の全貌はまだ完全に把握できていない。
■このようなことから内陸直下型地震はいつどこで起きるか正確に予知することは不可能に近いが、重要なことはいつ地震が来ても良いように自助・共助の精神で
地震に対する備えをしっかりしておくことである。
■筆者は1995年代に岐阜県の根尾村(現在岐阜県本巣市)にある中部電力奥美濃発電所(揚水式発電所)の建設工事で何度もこの地を訪れたがあるが、
その際に1891年(明治24年)の濃尾地震(M8.0)で地表に出現した「根尾谷断層」を見たことがある。道路の両側の田んぼが突然広範囲に渡り3~5m近く
段差がついていて、断層と直交する道路も断層の所で誰が見ても不自然な坂道で補修してあったように記憶している。
■現在はかなり風化や地形の変化等で筆者が見たときよりも明確ではないかも知れないが、部分部分は断層の跡がはっきり確認できるはずである。
なおこの活断層は国指定の特別天然記念物に指定されていて、断層の真上には「根尾谷地震断層監察館」が建てられている。
■ここでは動いた断層面の現場を直接見ることができ、断面はまさに【図21-2】の図そのもので、典型的「内陸型地震」のいわゆる直下型地震で
あることが分かる。地震活動の仕組みに興味がある人は必見である!
★根尾谷断層外部リンク先⇒本巣市「地震断層監察館・体験館」
<アスペリティ(地震の巣)> トップに戻る
■プレート境界型地震(海溝型地震)は断層面に歪が溜まり陸側のプレートがはね返ることで地震が起きるが、断層面は強く固着している場所と、するすると滑り易い場所がある。
■この「強く固着している場所」のことを「アスペリティ」(突起や凹凸の意味)と言い、断層面では「アスペリティ」の周りの滑り易い部分は普段するすると滑っていくため
「アスペリティ」部分が取り残されその部分に歪が徐々に溜まる。その歪が限界に達すると「アスペリティ」部分の岩石や岩盤が破壊し断層面が一気に動いて地震が起きると言われている。
■このことから「アスペリティ」を「地震の巣」と言うこともある。「アスペリティ」部分の破壊は「他のアスペリティ」と連動することもあるが、一般に最初の「アスペリティ」が破壊された所が
破壊開始点として震源とされる。
●このような「アスペリティ」による地震発生の仕組みは地震学者である「金森博雄 博士」が提唱した地震発生のモデルであるが、最近では「アスペリティ」の
位置や歪のレベルを調べる研究が更に進んでいて、将来地震の予測に繋がる可能性もある。
<本震と余震> トップに戻る
■規模の大きな地震の場合は最初大きな揺れを伴う「本震」が発生して、その後本震より規模が小さい地震が多発するがこれを「余震」と言う。このようなタイプを
「本震-余震型」とも言うが、そのほかに「前震-本震-余震型」(本震の前に本震より規模の小さい地震があるタイプ)や「群発的な地震地震活動型」(小規模な地震が
増えたり減少したり繰り返し一定期間で収束するパターン)などがある。
■一般的に余震のM(マグニチュード)は本震のMより1程度小さいとされているが、本震と同規模も発生する可能性もあるので注意する必要がある。現に2016年4月に発生した
熊本地震は最初「本震-余震型」タイプと思われたが、発生翌日本震を上回る規模の地震が起きたため「前震-本震-余震型」タイプに変更された。
つまり「余震」を甘く見てはいけないと言うことを物語っている。
■2014年の熊本地震では最初の本震と思われた地震がおさまった際に自宅に戻った方が翌日の本来の本震で住宅が崩壊して亡くなられた方が出ている。
■建物は地震の強い衝撃を受けると構造上重要な個所(柱、構造壁、梁、土台基礎など)が破壊したり一部損壊したりする。例え倒壊は免れたとしても構造的には
すでに耐震力を失っており、次に同等な地震がくると簡単に倒壊してしまう場合がある。このようなことから地震直後に耐震性が落ちた自宅で生活するのは控えるべきある。
■大きな地震の際は建築の専門家に被害状況を見てもらい危険性の判断をしてもらうことが重要だ。
<震度とマグニチュード> トップに戻る
■この震度は専門用語では「震度階」又は「震度階級」と言うが、気象庁が定めた【表21-5】の10段階で表現される。なお、 震度は「地表で感じる揺れの強さ」であることから震源付近が最も大きく、震源から離れるほど一般的には小さくなる。
【図21-5】震度と揺れの状況(出典:気象庁震度階級の解説)
■一方「マグニチュード」(Magnitude)は地震の規模あらわす尺度で英語表記の頭文字の「M」で表記する。
■地震は断層の破壊から起きることから「マグニチュード」は断層破壊の規模を表す尺度で「地震の規模」を示す。
■このことから震度のように場所により変化するものでなく地震ごとに決められる
変化しない値である。
■「マグニチュード」と地震が持つエネルギーの関係式は少々難しくなるので省略するが「M」の値が「1」上がると、そのエネルギー差は32倍に、「2」上がると1,000倍なる。
■つまりM7クラス地震の32倍がM8クラスの地震、1,000倍がM9クラスの地震と言うことになる。
■東日本大震災はM9.0で、その地震エネルギーの巨大さは日本で近代的な地震観測が始まって以来過去最大の規模で、まさに超巨大地震と言える。
■地震発生時に被害が大きいか否かはまずは「震度」の大きさで判断できる。たとえばテレビ・ラジオの地震速報で「震度:6強」や「震度:7」の情報が流されていれば、直感的に「現地では甚大な被害が出ている」と思った方が良く、
もはや国レベルで緊急な行動が必要な巨大地震が発生したことを意味している。
★「気象庁震度階級の解説」外部リンク⇒気象庁震度階級の解説
【過去の巨大地震とその地震規模】
●関東地震(関東大震災):M7.9
●兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災):M7.3
●新潟県中部地震:M6.8
●東北地方太平洋沖地震(東日本大震災):M9.0
<地震は繰返し発生する!> トップに戻る
【図21-6】東海・東南海・南海地震の発生状況
■海溝型巨大地震(M8クラス)は発生間隔が比較的短い傾向にあり相模トラフで起きた関東地震(関東大震災)は200年、
東海・東南海・南海地震は100~150年で過去ほぼ同じような場所で繰返し起きている。
■地震が同じ場所で繰返し地震が起きるのは、断層面で「歪の蓄積と開放」を概ね一定の間隔で繰り返している
ことに起因しているからだ。
■南海、東南海エリアの空白域はすでに75年(2019年基準)であるが、東海地震エリアは安政東海地震(1854年)以来165年間(2019年基準)も発生しておらず、
すでに平均的発生間隔年数である最大(150年)を過ぎていることになる。
■このようなことから「南海トラフ地震は切迫している」と言われていて、発生確率は今後30年で70~80%とされ、
いつ巨大地震が発生してもおかしくない状況だ。
■南海トラフ巨大地震が発生した場合の被害は死者32万人、倒壊家屋238万棟にも及ぶと国は想定していて、その被害規模は東日本大震災の約20倍にもなる。
■このように地震は繰り返して起きる傾向にあり安全な毎日が
続くと言うことは巨大地震のその日に向って刻々と近づいている
ことを忘れてはいけない。
■一方内陸の活断層による内陸型地震の発生間隔は海溝型巨大地震に比べて比較的長く早いもので800年~1,000年で、
長いものは1万年~数十万年にもなる。1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を起こした六甲断層群の活断層は1,000年前後で活動してきたと考えられる。
■まずは「自助」として「自宅の耐震化」やハザードマップを基に「津波や延焼火災からの具体的逃げ方」、「食料・水の確保」など家族で再確認するなどいざと言うとき
どのような行動を取るかを一人一人が真剣に考える必要がある。
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【出典先】
・【図21-1】地質調査研究推進本部地震調査委員会編「日本の地震活動(第2版)」P-17 図-2-17
・【図21-2】地震調査研究推進本部地震調査委員会編「日本の地震活動(第2版)」P-11 図-2-6
・【図21-3】平成23年度広報誌「ぼうさい」第63号(内閣府) P-14「海溝地震の仕組み」
・【写真21-4】地上に現れた野島断層(提供:神戸市)
・【図21-5】気象庁発行「気象庁震度階級の解説」 P-2を加工した
・【図21-6】内閣府防災会議資料「東海地震、東南海・南海地震について」P-4抜粋
【参考文献】
・防災士教本(平成28年7月1日第2版)
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